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Dario Deidda氏の来日は突然決まりました。 そう。 彼は現在、エレクトリック・ベースでジャズに取り組む者にとっては最高峰のミュージシャン。 ジャコ・パストリアスの奏法を消化、そして圧倒的なまでに昇華し、 フェンダー・ジャズ・ベースの素晴らしい音色でアコースティック・アンサンブルに溶け込むことのできる数少ない奏者です。 そして何より、彼のジャズ・ミュージシャンとしての語彙の素晴らしさは、 Hadrien Feraudをして「Amazing!」と言わしめるほど。 ↑Dario Deiddaのインタビュー記事(2008年Jazz Bass Player vol.4) 元々はKurt Rosenwinkelの2009年作品「Refrection」のレコーディングメンバーによる再来日公演で、もちろんこちらも待望されたものだったのですが、 ある時、東京の会場である東京丸の内のコットンクラブの公式ツイッターに… @cottonclubjapan: 【メンバー変更のお知らせ】 <7/2(土)&7/3(日)|KURT ROSENWINKEL TRIO > ベーシストが当初予定していたEric Revis (contrabass)からDario Deidda (b)へ変更となりました。 というツイートが流れました。 そこから数人のジャズ・エレベ民歓喜、 超ニッチでささやかな祭りが始まったのです… 先日、私の企画ジャコ・パストリアス特集の第二回にゲストで登場してもらった高橋将くんは数少ないジャズに取り組むエレクトリック・ベース奏者です。 今年2月、彼の企画エレキベースビバップ研究会の第二回にゲストで参加させていただき、彼の歪んだエレベ愛(褒め言葉です)に自分も刺激を受けています。 そして、彼はジャズ・エレクトリック・ベース界の頂点に君臨するDario Deidda氏を将来エレキベースビバップ研究会のゲストで日本に招聘したい… と夢を語っていましたが、 先ほどのツイートから、 クリニックが現実に…っ!!!?! こんなに早く実現するっ?!?! ということで、 高橋将くんの熱い想いとともに、第三回エレキベース・ビバップ研究会(Supportted by織原良次)という形でゲストに氏を迎えるという方向でなんとかクリニックにこぎつけることができました! ですが、直前の決定、 そして、我々が彼のことをいくら尊敬していても、 激烈に狭く暗く、湿度の高いジャズ・エレクトリック・ベース界。 人が来るかどうか… 日本でダリオ、といえばダリオ・ブランドーの知名度の方が圧倒的ですし、いくら世界屈指のスーパープレイヤーのクリニックとはいえ… 正直、たかはしくんと私の自腹覚悟のハラキリ企画でした。 しかしそんなことは杞憂でした。 Twitterなどで水面下での定員35名の集客は秒殺で売り切れ、 来日経験のないDario氏ですが、やはり注目度は高かったようです。 そして2016年6/30(木)日本ベース界の首都、新宿は百人町のBarchie'sにて開催されました。 ↑Barchie'sにて ↑演奏者側から激写。エレベ会、安定の女子0集会。 高橋将くん曰く、 当初イタリア語を話すことのできる通訳などを雇うことも考えたが、 ・イタリア語が話せて ・日本語が話せて ・ジャズに精通していて ・しかもモダン・エレクトリック・ベースの奏法的な知見がある という人を探すことは困難だ、とのことで高橋将くん自身の英語による通訳で進行しました。 まず、Dario氏の演奏から。 Charlie ParkerのCのブルース「Cheryl」の独演から。 そしてクリニックの開始です。 ①Dario氏の音楽変遷 まずは氏のバイオグラフィーから。 1968年3月生まれの氏。 お父様はビアニストだったそうでいわゆる音楽一家の出。 6歳でドラム、その後ピアノなどを弾く傍らベースに興味を持ったそう。 当初はアップライト・ベースでクラシックをやっていたそう。 10代前半の頃、ジャズに興味を持ち、当時最も先進的な音楽としてWeather ReportやJaco Pastoriusを知ったそう。 しかし氏の住むサレルノという小さい街ではWeather ReportのLPを探すのは難しかったようで、Miles DavisやJohn ColtraneのLPなどが手に入りやすかったそう。 82年のWeather Reportの来伊公演を観たそう。(当時ベースはVictor Bailey) 86年にBireli LagreneとJaco Pastoriusの双頭トリオのライブを観たが、(Weather Reportの「Heavy Weather」収録の)'HAVONA'で聴いたようなジャコではなかった、と語っていました。 Mike Stern やMichael Breckerなどの当時のトレンドだったジャズ・フュージョンにも熱中した時期があるそうですが、(ここでマイク・スターンのムード・スウィングのテーマの触りを弾いてましたw)、 自分はOld Music(ここではあらゆる音楽のことを指していると思いますが、殊ジャズに関しては50年代以前のもののことを言っている印象でした)、Funkなどリスペクトしている、そして(50年代の)John Coltraneの影響を多く語っている印象でした。 確かにDario氏のプレイをYouTubeやCDで聴いてきた印象ではチャーリー・パーカーはもちろんですが、50年代マイルス・バンド〜「Giant Steps」「Blue Train」、Thelonious Monkバンド時代のコルトレーンからの影響 が色濃いな、と思っていました。 ②ジャズを演奏するビギナーにアドバイス ここからは事前にあった質問を直接聞いていく流れでした。 ジャズを演奏するビギナーへのアドバイスとして、 「ジャズを愛すること」 と言っていましたね。 例えばエレクトリック・ベース奏者からよく聞くジャズのジャムセッションへのアウェー感などは正に、この一言に尽きるのでしょうね。 楽器の問題ではなく、本人の問題、ということ。 そしてアドリブについては、 子供が鼻歌を歌うようなシンプルなメロディーラインでアドリブできなければ、高度なアドリブは無理でしょう? プレイすることは会話と同じだから、基礎的な言語能力を身につけなくては、大人と会話(もちろん成熟度の例え)はできないでしょう。 と、シャンソンの代表曲で最も有名なジャズ・スタンダード・ナンバー「枯葉」を例にスキャットを交えて実演してくれました。 ③ジャズ・ベースのコントロールについて Jimi HendorixやJaco Pastoriusなど、 Old Fender ユーザーは、 楽器からの入力(Gain)をギリギリまで上げ、アンプの音量(Master)を大きめに設定、 演奏中の音量は手元のノブでコントロールする、とのことでした。 トーンは全開。 クリアなトーンにセッティングすると、粗が目立ってしっかりしたリズムとピッキングが必要になるのでより高度だ、と語っていました。 アコースティック楽器は基本的にエレクトリック・ベースでアンプを使用した時のようにブーミーになったりすることはありません。 ある意味ドライ、現実的な音ですので、エレクトリック・ベースもこもった音ではなく、はっきりした音色の方がよりアコースティック・アンサンブルに向いている、というのが織原の私見です。 開場前にニッケル弦よりもステンレス弦がいい、的なことを言っていました。 これもよりはっきりした音像を産むための選択でしょう(ちなみにジャコはステンレス弦)。 こういったはっきりした音色を得ることは奏法的にはすごく高度ですが、確固たる奏法形成をしていれば獲得できる技術でしょう。 この点は自分の発想やセッティングと全く同 じでした。 ④エクササイズ エクササイズはあるか、との質問がありました。 Dario氏は言わずと知れた「Hanon」をエレクトリック・ベースでやるエクササイズを紹介。 一つのポジション(縦に動く)でなく、ベースの指板を斜めに、全体的に使うことでピアノを弾くようなイメージでエレクトリック・ベースを弾く運指を実演。 例えば2.3弦のみでハノンの1番(CEFGAGFE.DFGABAGF〜)を弾く練習など。 左手の動きについては高橋将くんはかなりこだわっていて、このくだりなんかは特に、彼のような知識と技術を持っていなくては的確な通訳はできないでしょうね(笑)。 Django Reinhardtの左手(火傷によって左手に障害が残り、薬指と小指はコードワークのみ使用、メロディーには人差し指と中指しか使わなかった)を例にあげ、最小限の動きから運指を発想することなど。 正直、自分は左手の運指(音程の取り方やストレッチには独自のこだわりがあるつもりですが、ここでは横の動き)にはあまり頓着してこなかったため、目からウロコ、と同時に改めて左手の運指の奥深さに興味を持ちました。 高橋将くんはかなり納得の様子、きっと彼が研究、発想してきた事がより具体的になったのでしょう。 僕が高橋くんと会ってベース談義になったときに特に驚いたのがやはりこういった左手の スムーズな動きのバリエーションの豊富さです。 (詳しくは高橋くんに改めて教えてもらおうかな) 高橋くんはDario氏のハノンを弾いたくだりを果敢にチャレンジして我々に噛み砕いて伝えてくれました。 Dario氏はバイオリンの運指を取り入れた、とも言っていました。 右手に関してもかなりの時間を割いて解説していました。 基本な人差し指と中指のツーフィンガー(薬指ミュート、親指は積極的に4弦に下ろしていました。)奏法。 人差し指と中指の音が均一になることとオルタネイトが大切であると言っていましたね。 それと同時にDario氏には独自の右手のルールがあるそうで、中指ではレイキング(氏はスウィープと言っていました)しないそうです。 高音弦からの下降時、人差し指のレイキングはするが、中指で下弦にアプローチせずに人差し指に切り替える、とのこと。 そしてこれはあくまでDario氏のパーソナルなルール、だと念押ししていました。 オルタネイトとイレギュラーな動きのときの対処方法をより具体的にすることで明確な奏法形成に役立っているのでしょう。 左手も右手も一つの概念を一貫して練習、追求することが大事である、ということ。 これは奏者の数と同じバリエーションがあるわけですが、ここまでのこだわりを持つ奏者はなかなかいません。 ⑤エレクトリック・ベースにおけるウォーキング これは主催高橋将くんからの質問でした。 語弊を恐れずに書きますが、 エレクトリック・ベースによるジャズの演奏、とくに4ビートのウォーキングはウッド・ベースのそれに比べてより高度だ、と言っていました。 ウッド・ベースと比べて腰高で音像がはっきりしているので、より確かな内容が必須になるというようなことを言っていました。 経験上、エレクトリック・ベースでサウンドしにくい場面は多々あります。 それをカバーするものはやはり冒頭の「ジャズ愛」なのでしょう。 曲のメロディーやハーモニーやムードを充分に理解していることが前提ですから、ジャズ演奏してみよっかなー、とコードブックを見ながらひょいっと演奏できるものではないのです。 ⑥セッション 少し休憩を挟んでDario氏、高橋将くん、私でセッション。 ↑こちらは開場前のセッションの様子。高橋くんはDonna Leeをセッションしたり、色々質問してました。私はダリオ氏が弾き始めたBud PowellのCeliaをセッション! さて、本編のセッションの話に戻ります。 高橋くんが「Ornithology」をコール。 自分もYouTubeでDario氏のこの曲の演奏をよくチェックしていました。 (もしかしたら、近日この演奏の様子がアップされるかも…) というわけで無事に第三回エレキベース・ビバップ研究会は終了。 ジャズ・エレクトリック・ベース界にとっては御伽ねこむと藤島康介の結婚よりもインパクトのあるセンセーショナルなクリニックになったのではないでしょうか。 Dario氏は真面目に丁寧に受け答えをしていて紳士的な人柄がうかがえますね。 Supported by 織原良次、とのことでしたが、開催の一部協力とSNSの呼びかけだけで、何もサポートしてません(笑) 高橋くんの情熱に便乗してDario氏と共演したりクリニックに参加できた、という印象… まず高橋くん、ありがとう! そして快く閉店後の会場をお貸しくださったBarchie's千葉さん、斎藤さん、 Kurt Rosenwinkelの招聘元で開催に尽力していただいたsongXjazz宮野川さん、 記録をしてくれたKorg中原さん、 映像記録スタッフ玉置明人くん、 そしてご来場のお客様、 ありがとうございました! クリニックに参加できなかったDario氏の演奏未体験の方はぜひKurt Rosenwinkelの東京公演7/2.3、丸の内コットンクラブへ!! そしてまたDario氏が来日できるように日本でDario熱を高めましょう。 ↑1963年フレットレスを弾くダリオ氏!
by orihararyouji
| 2016-07-01 10:21
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